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カルティエ現代美術財団コレクション展@MOT

さて、見にいってから早3週間、ようやくアップにこぎ着けました、カルティエ現代美術財団コレクション展
なんとか会期末(4/22-7/2)にも間に合った・・・

いやはや、素晴らしい美術展でした。
時の流れが、私の中ではほんとうにゆったりと、時間を感じない空間にさまよいこんだように過ぎ、気がつけば3時間半くらい。私だけかと思えば入館時に見覚えのある人たちが出口付近でもやっぱりいて。
やはり素晴らしい、広がりと奥行きのあるコレクションであったのだと思うのです。

はじまりから最初の2室は、ジュエリーのような作品たち。
ライザ・ルーの「裏庭」は、天気の良い日に家族がランチを楽しんだかのような、人の気配が感じられるピクニックテーブル、洗濯物がゆれる物干し、地面の草花、そのすべてがビーズ編み。
そのメルヘンな世界が、じっと近づいて見た瞬間にすごいスポコンチックな汗の結晶に見えてきたりして、それも面白い。

3室目から徐々に謎かけ、問いかけ、ひねりが加わってくる。
デイヴィッド・ハモンズの諸作品に惹きつけられた。アフリカン・アートの仮面を多く使ったそれには、内面にざわっとしたものを呼ぶ風合いがある。
問いかけてくるような、目、目、目。

4室目では、認知における本物と偽物の境界がさらに問いかけられる。
ポスターやサイトのトップページに使われているロン・ミュエクの「イン・ベッド」の女性は、それが162×650×395センチという大きさである以外、すぐそこで息をしていそうな存在感を持っている。

展示は続き、3階へと進むと、金沢21世紀美術館でなじみのあるトニー・アウスラーの映写機を使ってボールに瞳を映す作品がまず。暗い室内にいくつもの大きな瞳が瞬く空間をおよぎ、その後に出会うのがデニス・オッペンハイムの「テーブル・ピース」。
広い一室を対角線にのびるながーいテーブルの両端に座って永遠の対話を続ける白い私と黒い私。
あっけにとられるようなその外観、その騒音ににやっと笑いながらも、そこにあるアイデンティティの終わりのない対話というテーマにはぐっと心を掴まれる。

そこから少し先へ行った所に展示されているクラウディア・アンデュジャールの「アイデンティティ・シリーズ ワカタ」がとらえた、モノクロの光にうかぶヤマノミ族の姿、表情も、こちらに差し込んでくるような力をもって迫ってくる。ヤマノミ族に関しては、レイモン・ドゥパルドンの記録フィルム(32分)も出品されている。

最終ゾーンであるB2階に入ると、現代生活へと視点が移る。都市の雑踏、人の暮らしの猥雑さ、残酷さ、そしてぬくもり・・・・・・。
同性愛カップルたちの684枚のポートレイト、ナン・ゴールディンの「性的依存のバラード」。
続いて森山大道の新宿・大阪で撮影されたモノクロ写真12点と、自身のアトリエを再現したという3262枚のポラロイド写真のパッチワークによる「ポラロイド・ポラロイド」。
ウィリアム・ケントリッジの木炭画アニメ「ステレオスコープ」(8分22秒)は南アフリカ社会を辛辣に、切なく描く。

すべては書ききれないけれど、キューバ、ラテンアメリカ、アフリカなどからのアーティストの作品も多く出品されていて、その批判的な、冷徹でいてしかし熱さを感じるそのまなざしは刺激的だ。

最後にじーんとほんわか感動させてくれたのが川内倫子の「Cui Cui」。
232枚の写真のスライドショー。
写真の透明感や艶はやはり写真集の風合いよりも断然よく、その誰の記憶の光景にもリンクする家族の記録―新しい家族ができて、家族の一人が去ってという、個体ではなく集合体としての家族の歴史―は、しんみりと、じんわりと染みいって、想い出の片隅から大切な記憶を呼び覚まして来たりする。
前の席に座っていたカップル。女の子がかなりしっかり泣いちゃって、隣の男の子がハンカチを差し出してるのがまたほんわか。

あの吹きぬけのゾーンには、またまた21世紀美術館で目になじんでいるサラ・ジーの、しかしぐっと大型の作品「立ち上がるものは全て収斂する」がそびえる。
そして光が差し込むガラスの向こうにはパナマレンコの潜水艦。

ここまであっという間だと思ったけど、すごい時間がたっている。
30分超の作品2点含め、映像作品がいくつもあるのだが、私はその全てを見たわけでもない。くまなく見るには1日がかりでもいいのかも。
1500円というチケ代はちょっとお高めと思ったが、見終わってみればすっごく安いものだった。
美しいもの、内面的なもの、外部的なもの、社会的なもの・・・希有なバランスで構成された上質の旅がそこにありました。

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