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映画/モーターサイクル・ダイアリーズ★★★

motor何よりも「人を愛する才能」(戸井 十月 :『チェ・ゲバラの遥かな旅』より。戸井さんはこの映画のパンフにも周囲からのこの評価を含めたエピソードを寄せている)に秀でた美しい革命家、エルネスト・ゲバラ。彼がまだ、ありあまる力の行き先を探し求める、そんなごく普通の若者だった頃の成長の物語。ストーリーなど詳しくは公式サイトを見てね。

恵比寿ガーデンシネマで公開初日に見ようとしてたのに、台風のため逃したこの映画。キューバの旅を終えて2ヶ月半たってようやく見ることができた。でも、キューバの地を踏み、そこに今も生き続ける彼らの「革命精神」を肌で感じ、またその地でゲバラの生涯について書かれた本(先の戸井さんのもの)も読むという贅沢な経験を経た後に見れたことに、今は感謝している。自分の愛する誰かのことを懐かしむようにこの作品の景色にふれられたことに、感謝している。

エルネスト・ゲバラ・デ・ラ・セルナ役を演じたガエル・ガルシア・ベルナルは、まさに適役。まなざしの深さ、どこかに行ってしまいそうな、どこか寄せ付けない部分を感じさせる一方で、ちょっと酔っぱらって女を口説きにかかったときに見せる笑顔のとろけるようなかわいらしさ。エルネストを愛して、命だって捧げようとした女達の気持ちが分かるって思うくらい、愛さずにいられないような顔を、ガエルは見せてくれた。

そして、相棒アルベルト役を演じたロドリゴ・デ・ラ・セルナ。配役が決まってからわかったことなのだそうだが、ファミリーネームがゲバラと同じ彼、実はゲバラのはとこ。なんだか、ただの映画じゃないものを感じさせる。キャラクター的にも、若さっていうよりは、スパニッシュの陽気なスケベオヤジ的、いい味を出している。

以下、この映画の中での印象的なシーンを。まだ見てない人はご注意の上・・・

なかでも、アマゾンにあるハンセン病患者を隔離収容する病院でのいくつかのエピソードは非常に印象的だった。患者にふれるとき手袋をするかしないかなど、合理的な根拠はないのに人を隔てる、心の中の境界を描きだす。特にクライマックスの川を渡るシーンは、原作にはないが象徴的な役割を担っている。

彼の24歳の誕生日に病院スタッフが盛大なパーティーをしてくれた際、エルネストは感動的な演説をする。人々を隔てる無意味な国境を超え、一つのラテン・アメリカを築こうと。ここまでの旅で見てきた様々な矛盾は、彼を変えていた。

そのエルネストを見つめるアルベルトのまなざしの演技も秀逸だった。アルベルトは生涯エルネストの友で、革命後はキューバに移り住み、今もかの地で暮らしている人物だ。映画の終わり、放浪の旅のすえ、彼は病院で働き始め、エルネストは医師の資格を取るため大学に戻る。映画で描かれた以降の話だけれど、エルネストを愛するアルベルトは、なんとかそのままエルネストに医師の道を歩むよう説得したのだけれど・・・。
大きな男になるに違いないという予感、尊敬の念とともに、いつかこいつは理想のために命を危険にさらすんじゃないか、銃なしでの革命などありえないというエルネストのかつての言葉を記憶するアルベルトには、そんな思いもよぎったろう。

その演説の後、エルネストは無謀にも、夜のアマゾン川を泳いで渡ろうとする。反対の岸にある、ハンセン病患者達の暮らす領域に行くために。自分のいた場所からの引き留める声を振り切り、向こう岸からの声援に励まされ、エルネストはそのまだ誰も渡りきったことのない境界を超えた。彼のこの後の生き方、革命への決意、希望を象徴するようなシーンだ。

映画のシーンでは壁は超えられた。しかし現実の世界では、彼が信じた世界はまだやってきていない。その思いの熱さはしかし、ラテン・アメリカの人々の胸のうちに受け継がれているのだろう。パンフレットに掲載されたこの映画にかける監督、キャスト達の言葉からもそれは感じられる。

とはいえ、映画で描かれたのは、革命家としてのエルネストの前章部分に過ぎない。興味を持った人には是非、関連書籍を読んでみることをおすすめする。

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Comments

TBがえしありがとうございました。

ガエルはチェをうまく演じてましたね。僕はチェ関連の本は先に読んでいたので、この後のチェの人生の展開を知ってから見たのですが、やはりこの映画はある程度チェの人生を知ってから見たほうが楽しめるかも、と思いました。例えば「銃なしで、、、」というのセリフも、後の人生を知っているのと知っていないのでは大分意味が違ってくるような気がします。

それにしてもキューバ、行かれたのですね。僕も年末に4日間だけ行って来ました。コヒーバ欲しかったのですが、アメリカ在住の僕は残念ながらキューバ製品を一切持ち込めないのです。残念、、、。

Posted by: ウギー | Jan 18, 2005 at 01:14 PM

ウギーさんTB&コメントありがとうございます。
ウギーさんのとこも映画以外もキューバ旅行記とか見せてもらいましたよ。
このあとコメントに行きますね(^^)
ほんと、予備知識がないと、たぶん全然見え方がちがうだろうなって思いました。たぶんそれはそれで、青春ロードムービーとして楽しめるんだろうけど、ゲバラに興味があってみた人には物足りなかったりもするかもって思いました。「銃なしで・・・」も映画中にはないエピソードですよね。日本語版パンフにはシナリオが全編掲載されてて、その欄外解説に記載されてるんですけどね。でも、そういう複線、分かってこそ見えるものがあるから、まあ、何度でも見ていい映画なのかも。

コヒーバ、私もお土産だけだから自分ですってはないので同じようなものかも。っていうかたばこだめなので、葉巻工場見学したときに休憩中ぽいお兄さんがすってみる?とか聞いてくれたんですが、断りました・・・。お兄さんはあんなことしても良かったのかな? なんか、めっちゃ厳重に、持ち出しとかチェックされてるらしいです。

Posted by: neco | Jan 18, 2005 at 11:54 PM

コメント有難うございました。

この映画まだ私は観てませんけど、きっと観にいこうと思ってます。そう言えば今年はまだ映画館に行ってない・・・。チャン・ツィイーにあこがれているやぶ猫でした。またよろしく御願いします。

Posted by: やぶ猫 | Jan 20, 2005 at 12:09 PM

当地では上映されていませんでした・・・orz
田舎住まいの悲しさです。。。

Posted by: | Jan 20, 2005 at 05:17 PM

やぶ猫さん
そっかー。残念でしたねー。
あとは待てビデオ/DVDですね! 大画面じゃなきゃ!って感じの作品じゃないのでOKですよ。
でも見れないとなるとより見たくなるもんですよね~

あ、チャン・ツィーといえば、「オペレッタ狸御殿」でオダギリ・ジョー相手に狸姫やるんですよね。どんな日本語話すのか楽しみかも。でも、お金払って見たくなるかはちょっと微妙・・・

ネコつながりで、これからもよろしくお願いしますね!

Posted by: neco | Jan 21, 2005 at 12:04 AM

初めまして!
マスターオブライフ主宰PONと申します。
この度は不躾な押しかけTBのご承認
およびTBRしていただきまして
有難うございました。
そろそろこの映画も「DVD」発売ですから
再び話題になればとTBさせていただいた
次第です。
今後も宜しくお願いします!

Posted by: PON | May 21, 2005 at 12:46 AM

PONさん

PONさんのレビューも拝見しましたよー。
こっちはコメントも残さず失礼しちゃいましたのに、わざわざ来ていただいて恐縮です~。
そうか、もうDVD発売の時期なんですね。
早いなあ。
地方によっては、これでようやく見れる!って人もきっと多いですもんね。
うん、私もまた見たいです~

Posted by: neco | May 21, 2005 at 01:44 AM

necoさん、こんばんは。
トラックバックありがとうございます。
今までキューバとか南米というのはすごく遠いイメージがありましたが、身近に感じるきっかけになる映画でした。necoさんはキューバに行かれたんですよね。マイフォトの写真を見るとなかなかいいところみたいですね。

Posted by: frugel | Aug 09, 2005 at 10:12 PM

frugelさん

こちらこそありがとうございました。
キューバ、いいところですよ。
自然がたくさんあって、のんびりしてて安全。
私が出かけたい所はそういう所なんですが、キューバもそういう所。しかも、のんびりにもほどがあるほどの筋金いりのマイペース。

映画では南米大陸の国々を旅してて、それぞれ魅力的でしたけど、治安の点でキューバほど気軽に行けるところではないような・・・
でもマチュピチュにはいつか絶対行きたい!

Posted by: neco | Aug 10, 2005 at 12:47 AM

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