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フランスvsフランス系カナダ

英仏二言語を公用語とするカナダでも、ケベック州以外は英語圏で、フランス語話者はケベック州内ではマジョリティでも、国家レベルでは圧倒的なマイノリティという構図になる。
しかも、すぐ南にはアメリカという巨大な英語話者の帝国もある。

英語はもはや「世界の公用語」のような地位を占めつつもあるなかで、ケベコワ(ケベック人)達が持つ「言語的マイノリティ」としての「文化的絶滅」への危機感は少なくない。
それがナショナリズムをかきたて、分離志向への引き金となっている。

それをわずかに押しとどめているのは、現実的・合理的な価値判断。つまり、分離した場合にこうむるであろう経済的打撃への懸念である。モントリオールは現在世界の中枢的都市の一つとして、国際的な機関や企業のヘッドオフィスを多くかかえているが、もし分離となった場合、そうした諸機関の多くはトロントへと引き揚げるのではないか、という声をしばしば聞いた。分離への懸念があるだけでも、企業誘致などにおいて大きなネックになっていているともいう。

では、カナダの中のケベックであり続け、かつ、独自の文化特性を保ち続けるには?

この問いへの答えとして政策的に重視されているのが、フランス語を話す移民の積極的受入だ。
難民の受け入れにおいても、ベトナムやフランス語圏アフリカなどから多くを受け入れてきたが、ベルギーなどのヨーロッパのフランス語圏諸国からの移民も少なくない。

そのフランス語を話す移民の中でも、フランス人にケベコワはかちんときているという話を聞いた。

「自分からケベックに移民してきたというのに、ケベックのことを見くだしている」
「自分たちのフランス語だけが正しいと思っていて、私たちが話すフランス語をいちいち直そうとする」
「私たちは彼らを受け入れる義務があるわけではない。こちらの文化をけなしてばかりいないで、敬意をはらうべきじゃないのか」
などといった不満である。

植民から数世紀を経て、ケベックのフランス系カナダ人は、フランスのそれとは異なる語彙、異なるアクセントやイントネーションでの話し方を持つ独自のフランス語を形成してきた。
とはいえ、お互い話して意思の疎通ができないほどではないという。

特にケベック人はフランスで作成された映画やドラマも見るし、だからフランスのフランス語を聞くことにも慣れている。一方で、フランス人がケベックのことをそうよく知っているかというと、けっしてそうではない。そして、「ケベック人の話すフランス語はなまっていて何を言っているかよくわからない」ということになりやすい。
彼らから見たら、ケベック人がフランスから継承し、そしてカナダで発展させてきた言語や文化は、「ケベック語」として尊重するようなものではなく、単なる「まがいもの」のフランスのように見えるのだろう。

ベルギー人移民など、他のフランス語圏からの移民はどうかと聞くと、まったくそんな問題はないという。
言語の相違自体は大きな問題ではないのだろう。その違いに上下関係を持ち込むことが問題なのだ。
フランス人移民の「本流」意識、自分たちがもっとも正統で、高尚なのだというような態度は、「ケベックをフランスの植民地としても思っているのか!」といった怒りをケベコワたちに抱かせている。

カナダに最初に入植したのはフランスで、イギリスが来たのはその後だ。両者の力争いの中で結局イギリス系がカナダの覇権をとり、フランス系入植者は経済・社会的に長く低位におかれてきた。この覇権争いに敗れたことへの恨み辛みは、いまだに、若い世代からも聞かれる。

先のフランス人移民の態度に対する怒りは、そのとき自分たちを見捨てたフランス本国への怒りへとつながっている。「あのときケベックを見捨てたくせに、今だフランスの属国のように扱うとは!」というわけだ。

イギリス系への敵対心・対抗意識ということでは、「フランス系」としてくくれるのかもしれないが、「フランス系」のなかみもさほどに多様で、価値対立がある、ということを感じされる事例である。

統計では、カナダには200もの言語集団があるという結果が出ている。この言語における多様性とともに、一言語(言語だけでなく、宗教その他に同様に言えることだが)内における多様性の高さ、ある時はくっつき、あるいときは対立する複雑さが、カナダの現実なのだろう。

それは面倒なことのようにも思え、一方では、そこで生まれる新しい何か、新しい文化を生み出す活力にもあふれているようにも思える。
モントリオールは、ビジュアル・アートなどの分野において世界的な発信地となっている。それを支えているのも、古さと新しさ、多様な文化のミックス感なのかもしれない。

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Comments

コメント、並びにトラックバックありがとうございました。
詳しい現地の状況を興味をもって読ませていただきました。
小学生時代カナダのエドモントンと言うところに行った、藤永君のことを思い出したりしてしまいました。

Posted by: shoji3125 | Nov 26, 2004 at 03:52 PM

また見にきていただいてありがとうございます。
ちょっと手直しして保存時直したとき、設定わかってなくってトラバ2回追加で送ってしまいました。ごめんなさい。削除してくださいね。
エドモントン、中西部ですよね。東部とは気候、歴史、文化、大分違うと聞いていますが、州のイメージとしてはカナディアンロッキーかな(^_^;)カナダの顔であり、最初から行きたい行きたいっていいながら行ったことないので、是非夏に行ってみたいです。夏は短く気候は厳しいんだろうから、きっと暮らすのは大変なんだろうなあ。

Posted by: neco | Nov 26, 2004 at 04:07 PM

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Tracked on Nov 26, 2004 at 03:50 PM

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