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Kazuo Nakamura "A Human Measure"@Art Gallery of Ontario

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モディリアニ展「Modigloani: Beyound the Myth」開催中(~2005年1月23日まで)のオンタリオ美術館に行ってきた。

モディリアニ展のほかにも、いくつもの企画展示が行われているのだけれど、そちらもおもしろかった。コンテンポラリー・アートのコーナーでは、イヌイットの生活と文化をフューチャーした展示があって、氷の下の音をアザラシになった気分で聞いてみたり、アザラシ漁のようすを記録した映像を見たりした。
中でも印象的だったのは、日系カナダ人Kazuo Nakamuraの企画展「A Human Measure」。
モディリアニ展のことは別にコメントでちょっと書いたので、この企画展のことをちょっと書いてみたい。

中村はカナダの抽象画家グループPainters Elevenの一人として、1950年代の作品が最もよく知られているそうなのだけど、今回の企画展は、彼の、数学と科学への強い関心に基づくジオメトリックな後期の作品群をフューチャーしている。数学的図形、数と自然の形状等、興味深いものなのだけど、私がひきこまれたのはのはその50年代の作品。深い青の世界、柔らかい緑の世界。この色彩については東山魁夷の印象が最も強いのですが、中村の作品は、抽象画としては最も(私にとって)美しい青と緑を見せてくれたように思う。水彩画の質感もすごくいい。

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Kazuo Nakamura, Inner Structure, 1956,

彼は1926年にバンクーバーに生まれ、10代で第二次世界大戦中収容所生活を経験している。彼の家族は戦後オンタリオ州に定住し、2002年、トロントで他界した。

収容所送りの命令書のほか、収容所を描いたごく初期の作品もいくつか展示されていた。
展示されていた命令書は、英語と日本語の二言語で書かれていて、明日の夜までに、一刻の猶予も許さず収容所に移動するようにとの内容だった。彼らが営んでいた暮らしのすべてが、一瞬にして奪われたのだということを目の当たりにするとき、想像するだけで苦しくなる。

私にとってもその経験にふれることは貴重な経験だったし、この企画を通して、彼らの経験が多くのカナダ人に伝えられていくことの重要性も感じる。
今回こちらにきてから日系3世の女性と話す機会もあった。彼女の祖父もバンクーバーで事業をしていたのだが、すべて取り上げられ、収容所に送られたのだそうだ。後に補償を受けはしたけれど、失われたものの大きさとは比べられない。取り戻せはしない、違うものなのだと彼女は語った。

収容所生活の中で中村は絵を描き、それらの水彩画から始まって、後に彼は著名な画家となった。本当に、創造性というものは、苦しい生活の中で、心の救いとなり、大きく成長していくのかもしれない。
この企画展は来年の1月2日まで。

オンタリオ美術館そのものの紹介も少し。

初めて訪れたのは10年前。カナダの自然を描いたグループ・オブ・セブンのコレクションやイヌイットのアートの印象が強く残っている。グループ・オブ・セブンの作品群は、ヨーロッパの印象派、私の好きなゴッホの色彩と質感に重なるものを持っていて、かなり好きなタイプ。アーティストによってはクールな色彩もあるのだけど、それもまた冷たい感じではなく、たとえれば、磁器ではなく陶器の厚みやぬくもり感があるのだ。カナダの素朴で力強い自然を感じられる。
その他、カナダ人作家の作品を多く収集、展示しているほか、ヘンリー・ムーアのコレクションも豊富。

ギャラリーショップも大きい。ポスターやアートブックのほか、カナダ人作家の服飾品、装飾品、陶磁器など販売していて、メイドインカナダのセンスのよいおみやげを手に入れるにもいいところ。
今回は、マグカップのほか、黄色とグリーン、茶のグラデーションがすっごく気に入ってしまったクリーマーとシュガーポットのセットも(使わないのに)買い込んでしまった。ああ、荷物がどんどん大きくなる・・・

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Comments

きれいな青色って、俺もひかれます。色って、その人の心を映してるみたいで。美術の事はよくわからないんですけどね(汗)
カナダまで行かないと見れないんですよねぇ。

Posted by: はまじ | Nov 09, 2004 12:07 PM

以前は色の構成、あるいは1色で塗られてるだけとかの絵にはに魅力を感じなかったのですか、このところ、そういう作品も楽しめるようになりました。何が描かれてるでもなく、純粋に色のパワーなのかな、その色から伝わってくる感触ってあるなあって思うようになりました。実際、その前にたっているとエネルギーが伝わってきたり、ふわっと暖かくなってきたりする作品にも出会います。そういう絵は、部屋におけたらいいなあとか思うし。暗いのとか、悲しいトーンのは美術館でだけでいいですが。

Nakamuraの企画展については図録もあったんですけど、やっぱり色が全然違うんですよね~。
今回書くのにちょっと検索して見たんですが、日本では全然紹介されてないみたいでした。カナダ絵画全般があまり紹介されないこともあり。北米っていったらアメリカってなっちゃいますもんね。この美術館の収蔵品なので、いつかカナダに来るチャンスがあったら、どれかの作品には出会えるかもしれませんよ。

Posted by: neco | Nov 10, 2004 12:59 PM

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